一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

肥満や糖尿病になるとなぜ「骨格筋」が減少? 新たなメカニズムを解明

キーワード: 二少(少食・少酒) 一無・二少・三多 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム

 肥満や糖尿病の患者で骨格筋が減少するメカニズムを、京都医療センターや健康科学大学などの研究チームが世界ではじめて解明した。
 肥満や2型糖尿病の患者では、「高インスリン血症」が起こりやすい。血中インスリン値の上昇とともに、骨格筋の減少作用をもつ分子である「マイオスタチン」の量が増えることが、骨格筋減少につながっているという。
骨格筋が減ると肥満や糖尿病が悪化する
 「インスリン抵抗性」とは、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態。インスリン抵抗性は、それ自体が糖尿病の原因になるが、同時に、インスリンが効きにくくなったのを補うためにインスリンが多量に分泌され、「高インスリン血症」をまねく。

 一方、骨格筋は体の30〜40%という大きな割合を占めており、身体活動だけでなく、糖を消費してエネルギーをつくる役割も果たしている。骨格筋は、運動や代謝という点から身体活動を支えている、健康寿命を延ばすために非常に重要な部位だ。

 骨格筋は重要であるにもかかわらず、加齢に加えて、運動不足、不健康な食事、さらには肥満や2型糖尿病などによって減少してしまう。肥満や糖尿病での骨格筋減少のメカニズムは詳しく分かっていなかった。

 そこで京都医療センターや健康科学大学などの研究チームは、国内有数の肥満症・糖尿病コホート(解析集団)をもつ京都医療センターの日本人肥満患者を対象に、肥満における骨格筋減少のメカニズムの解明に取り組んだ。
マイオスタチンが骨格筋やインスリンと関連
 研究チームは、肥満患者の身体組成(体重、腹囲、骨格筋量や脂肪組織量など)や血液指標(糖脂質代謝マーカーや炎症マーカーなど)を解析し、骨格筋の減少に関連する分子を探した。

 その結果、骨格筋を減少させる作用をもつ分子「マイオスタチン」と骨格筋量やインスリン量との間に、重要な関連があることを突き止めた。

 「マイオスタチン」は主に骨格筋で作られる分子で、通常は骨格筋が増え過ぎないように調節することで、身体活動の良好なバランスを維持する作用をしている。

 膵臓で作られるインスリンは、骨格筋などに作用して糖の取り込みを促し、血糖値の調節に関わっている。

 研究チームは今回の研究で、肥満患者において、血液中のインスリン量が多いほど血液中の「マイオスタチン」の量も多くなることを世界ではじめて明らかにした。
骨格筋を維持するためにマイオスタチンを調整
 このことは、肥満の病態が進行してインスリン抵抗性が起こり、高インスリン血症になると、骨格筋を減少させる作用のある「マイオスタチン」の量が増えることを示している。

 さらに、インスリン量と「マイオスタチン」の量の相互関係には、「マイオスタチン」を作る骨格筋の量は影響しないことも分かった。

 つまり、骨格筋量が同じであっても肥満病態がより進展してインスリンの効きが悪くなっている状態では、「マイオスタチン」の量も増えており、骨格筋が減少するリスクがより上昇していると考えられる。

 こうした悪循環により、動脈硬化症や心血管病、認知症などの合併症のリスクも上昇する。

 「マイオスタチン」を分子標的として骨格筋維持をはかることで、肥満や2型糖尿病やその合併症(動脈硬化症、心血管病、認知症など)を効果的に予防する新たな治療法を開発できる可能性がある。

 研究は、国立病院機構京都医療センター臨床研究センターの浅原哲子研究部長や、健康科学大学健康科学部理学療法学科の田中将志講師などの研究チームによるもので、「Diabetes Research and Clinical Practice」オンライン版に発表された。
健康科学大学健康科学部理学療法学科
国立病院機構京都医療センター臨床研究センター
Role of serum myostatin in the association between hyperinsulinemia and muscle atrophy in Japanese obese patients(Diabetes Research and Clinical Practice 2018年6月7日)
[Terahata]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2022年01月26日
【新型コロナ】テレビばかり見ていると血栓症リスクが上昇 糖尿病の人は立ち上がって運動を
2022年01月20日
インターバルトレーニングが糖尿病の人の糖代謝を改善 速歩とゆっくり歩きを交互に 脂肪肝も解消
2022年01月20日
糖尿病は認知症リスクを高める 予備群の段階でリスクは上昇 認知症を防ぐ生活スタイルとは?
2022年01月19日
肉やソーセージを食べ過ぎると糖尿病リスクは上昇 植物性食品に置き換えるとリスクは減少
2022年01月13日
糖尿病の人は血糖値が高いと歯を失いやすい 歯の喪失をこうして防ぐ 予備群の段階からご注意

疾患 ▶ 肥満症/メタボリックシンドローム

2021年12月15日
「早食い」は肥満や体重増加につながる ゆっくり味わって食べるとエネルギー消費量を増やせる
2021年12月10日
肥満は糖尿病の人にとって大敵 体重をコントロールして糖尿病を改善 成功するためのコツは?
2021年11月10日
新型コロナウイルス感染拡大の陰で起きている体調変化や生活習慣に関する最新調査
2021年10月19日
【新型コロナ】糖尿病と肥満の人はなぜ重症化しやすい? 感染と重症化を防ぐためにこれが必要
2021年10月01日
肥満の人は日常生活動作(ADL)が低下しやすい 健康寿命も短縮 若い頃から健康な生活で対策を

一無・二少・三多 ▶ 二少(少食・少酒)

2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
高齢者の「フレイル」は家電の利用状況を調べれば分かる 電気使用を見える化する「スマートメーター」で高齢者の健康をチェック
2021年04月16日
腎臓病を予防・改善するための「8つの法則」 世界の成人の10人に1人が腎臓病 世界腎臓デー
2021年04月16日
中学生でも肥満だと代謝異常リスクが3倍に上昇 女子中学生では軽度の過体重でも高血圧のリスクが
2021年04月16日
世界肥満デー 世界の20億人が肥満か過体重 2025年までに世界の成人の5人に1人が肥満に

 ▶ 一無・二少・三多

2022年02月01日
こころの密を育てる―ネガティブになりがちな今だから「多くの人・こと・ものとつながる」
毎年2月は『全国生活習慣病予防月間』―Web講演会公開中!
2022年01月23日
1月23日は『一無、二少、三多の日』!
「一無、二少、三多」ピクトグラム公募結果と全国生活習慣病予防月間2022のご案内
2021年11月17日
全国生活習慣病予防月間2022実施概要決定! 
テーマは多接:多くの人・こと・ものとつながる!
2021年10月13日
昨年より生活満足度は低下、コロナ前後での比較検討も「満足度・生活の質に関する調査報告書2021」より
2021年10月04日
最優秀賞 25万円! 健康スローガン「一無、二少、三多」のピクトグラム公募
予防月間2022
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート