2018年02月26日
人工知能(AI)で「胃がん」を早期発見 98%の精度で「熟練医に匹敵」

がん研究会有明病院などの研究グループは、「人工知能」(AI)を活用し、胃の内視鏡画像の中から胃がんを98%の高精度で検出できるシステムを開発したと発表した。これは熟練した医師に匹敵するレベルで、胃がんの早期発見や正確な診断につながると期待されている。
AIで胃がん検診 胃がんの多い日本で実用化
胃がんは日本では発症数がもっとも多いがんで、年間約13万人が罹患し、約5万人が命を落としている。胃がん治療のキーポイントは内視鏡による早期発見と早期治療だ。ステージIの5年生存率は95%以上で、さらに粘膜内がんで発見された場合は、体の負担の少ない低侵襲の内視鏡手術で根治が可能となる。
しかし、慢性胃炎の中から胃炎に類似している胃がんを拾い上げることは、経験を積んだ医師でも難しい場合がある。内視鏡による胃がんの見逃しは5〜25%という報告がある。また、内視鏡医の経験と技量の差も大きな課題となっている。
一方で近年、「人工知能」(AI)による画像認識能力は大きく進歩し、人間と同等以上の成績が得られるようになっている。内視鏡診断でも大腸の領域で、病変の拾い上げや良性と悪性の鑑別にAIを用いた診断システムが報告されている。しかし、胃がんは内視鏡診断そのものが非常に難しいため、これまでAIを用いた内視鏡診断支援システムは開発されていなかった。
そこで研究グループは世界に先駆け、欧米と比べても罹患患者が多い日本で、医療現場に実装できるAIによる胃がんの内視鏡診断支援システムの開発に乗り出した。
研究は、がん研究会有明病院の平澤俊明・上部消化管内科副部長と、AIメディカルサービスの多田智裕医師(ただともひろ胃腸科肛門科院長/東京大学医学部客員講師)らの研究グループによるもの。AIメディカルサービスは、AIと内視鏡を組み合わせた新しい治療法の開発に取り組んでいるベンチャー企業だ。
「機械学習」と「ディープ・ラーニング」で胃がんを発見するシステムを開発

98.6%の精度で胃がんを検出 熟練した内視鏡医に匹敵
1万3,584枚以上の胃がん内視鏡画像をAIに機械学習させ、病巣検出力を検証した。その結果、検証用の内視鏡画像2,296枚から、66の連続した胃がん症例(77病変)が登録された。77病変中71病変(92.2%)の胃がんを検出し、6mm以上に限定すると71病変中70病変(98.6%)を検出するのに成功した。これは熟練した内視鏡医に匹敵するものだ。
また、2,296枚の画像の解析に要した時間は47秒(1画像あたり0.02秒)であり、解析速度は、人間の能力をはるかに超えるものだった。
陽性反応的中率(内視鏡診断支援システムが胃がんと診断して、実際に胃がんであった率)は30.6%で、内視鏡診断支援システムが胃がんと診断した病変のうち7割は胃炎や正常な解剖学的な屈曲だった。
実臨床での生検の陽性反応的中率(がんを疑って生検して、実際にがんである可能性)は5〜10%前後であることを考えると、今回の内視鏡診断支援システムの陽性反応的中率は臨床的に許容できるレベルだ。
診断精度をさらに向上させることも可能

AIメディカルサービス
Application of artificial intelligence using a convolutional neural network for detecting gastric cancer in endoscopic image(Gastric Cancer 2018年1月15日)
[Terahata]