2014年07月11日
サッカーは高齢者にも勧められる 週2回のサッカーで身体機能が改善
キーワード: 高血圧 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム 脳梗塞/脳出血 「多動」身体を活発に動かす 認知症 身体活動・運動不足

サッカーは若者向けのスポーツという印象が強いが、運動強度を適度にコントロールすれば、高齢者にとっても効果的な運動になることがデンマークの研究で明らかになった。
サッカーが高齢者の身体パフォーマンスを高める
デンマークのコペンハーゲン大学スポーツ健康研究所の研究者らによる研究で、ふだんトレーニングをしていない高齢男性がサッカーをプレイすることで、身体能力が向上し、筋力や骨密度も改善し健康になることが明らかになった。
高齢者がサッカーを取り入れたトレーニングを週に2回、1回1時間、4ヵ月間にわたり続けることで、最大酸素摂取量、筋機能、骨密度など、健康的な生活をおくるうえで重要となる指標が改善することが確かめられた。
サッカーは欧州を中心に人気のあるスポーツで、ルールが単純なので参加しやすく、社会的な相互交流の要素も含んでいる。プロスポーツとしてのサッカーは常に走り続ける激しいスポーツという印象があるが、アマチュア選手のサッカーでは通常の歩行をする時間も多く、適度なインターバル運動になるという。
研究は、ふだん運動をしていない63〜75歳の男性を対象に行われた。参加者を、▽週に2回1時間のサッカーを楽しむグループ、▽週に2回1時間の筋力トレーニングを行うグループ、▽何も運動をしないグループに分けた。
研究開始から4ヵ月間後の時点で、サッカーを行ったグループでは、身体パフォーマンスは50%向上し、最大酸素摂取量は15%増加し、筋肉機能は30%向上したことが分かった。大腿骨の骨密度も2%改善していた。
運動習慣のない高齢者でもサッカーなら長続きする
「高齢者は特に骨密度が低下しやすく、運動によって改善することができますが、骨折リスクを低下させるのは容易ではありません。サッカーであれば、運動や心臓の能力を向上させる効果や、転倒や骨折のリスクを最小限に抑える効果を期待できます」と、コペンハーゲン大学のピーター クルストラップ氏は説明する。
また、運動を続ける上で障害になるのは、運動を安全に行うことに加えて、運動を続けられるよう動機付けを与えることだという。今回の研究では、運動経験のない高齢者に限定したため、体力差が大きくなく、参加者は均等にスポーツに参加することができた。
「サッカーは人気があり、集団で行うスポーツなので、参加者に楽しみを与えることができます。研究の参加者の多くは、サッカーを続けることで満足度が高まることが示されました。運動をすること自体が動機になるのは強みです。楽しく運動をできる環境であれば、運動は長続きします」と、クルストラップ氏は述べている。
研究者らの以前の研究では、70歳代の男性がサッカーに関わることにより、姿勢やバランス機能が保たれ、若い頃に比べた体力機能の低下は抑えられていたという。
GPS測定やビデオを用いた分析により、サッカーにはダッシュや急停止、ターン、ドリブル、パス、シュートなど多様な運動の要素が含まれることが明らかになった。
サッカーにより心肺機能と筋力が向上すると、階段を登る、買い物をする、自転車に乗る、ガーデニングなどの日常的な身体活動も容易にできるようになる。こうした身体能力の向上が生活の質を改善していくという。生活の質を改善することで、要介護のリスクが低下し、家族の健康リスクを低下させることも可能になる。
「サッカーにはじめるのに、歳をとりすぎている、ということはありません。ただし、過度の運動はかえって身体的な障害を高めるおそれがあるので、無理をしないことが大切です。会話ができるくらいのペースで、社会的な交流を高めながらサッカーを行うと効果的です」とアドバイスしている。
Football for untrained 70-year-old men - beneficial effects on heart function, muscle strength and bone mineralization(コペンハーゲン大学 2014年6月6日)
[Terahata]