2013年04月22日
適度なストレスは脳の活性化に役立つ
キーワード: 二少(少食・少酒) 三多(多動・多休・多接)

ストレスが慢性化すると、心や体にさまざまな不調があらわれやすくなるが、ストレスは「百害あって一利なし」というわけではない。適度のストレスは、むしろ脳の働きを活性化するという研究が発表された。
ストレスは肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの原因となる。保健指導では、ストレスを引き起こしている問題をできるだけ早く解決してためこまないようにすることが勧められることが多い。しかし、カリフォルニア大学の研究チームが行った動物実験によると、突発的なストレスが適度にあると、神経細胞が大幅に増殖し、むしろ記憶力の向上に役立つという。 「たしかに過度のストレスが慢性的に続くと、心身に良くない影響があらわれます。しかし、適度なストレスがあると、むしろ脳内では特に記憶力に良い作用がもたらされることが分かりました」と、カリフォルニア大学バークレー校のダニエラ カウファー氏(統合生物学)は話す。 カウファー氏はマウスをカゴに入れ、迷路を正確に通るとエサを与える実験を行った。ストレスを与えたマウスは、そうでないマウスに比べ、記憶力が向上するという結果になった。 ストレスを受けると脳内に「グルココルチコイド」というストレスホルモンが増え、危機的な状況になり、中枢神経系に悪影響をもたらされる。ストレスを与えたマウスの脳内では、グルココルチコイドが増加していた。 一方で、ストレスに対抗する作用も起こる。ストレスホルモンによって、脳の神経系を構成しているグリア細胞から、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)と呼ばれる化学物質が活発に放出されるようになる。FGF2は神経幹細胞を増殖する働きをし、脳の活動を活性化する。 「ストレスを与えたマウスの脳内ではFGF2が多く放出されていました。FGF2はうつ病の発症に関連があることが分かっており、興味深い結果です」と、カウファー氏は述べている。 慢性的なストレスが続く多忙な生活は、食事時間の不規則、早食い、夜食など、内臓脂肪のたまりやすい食習慣をしばしば伴う。ストレスはうつ病のリスクも高める。 しかし、たまに適度なストレスがある場合は、むしろ注意深さを引き出し、行動・認知能力のパフォーマンスを引き上げるのに役立つという。 「記憶を司る海馬状隆起の働きを活発にするには、ある程度の時間が必要です。強すぎないストレスが持続することが、脳神経にも良い影響をもたらすと考えられます」と、カウファー氏は説明している。 Researchers find out why some stress is good for you(カリフォルニア大学 2013年4月16日)
[Terahata]