2012年03月30日
がんの半数は生活習慣の改善で予防が可能
キーワード: 二少(少食・少酒) がん 「無煙」喫煙は万病の元 三多(多動・多休・多接)
全てのがんの半数は生活習慣の改善により予防が可能だとする研究が発表された。
米ワシントン大学医学部サイトマンがんセンターのGraham Colditz氏(予防医学)は、「がんの半分は予防が可能であることを示す情報は十分にある。しかし、乗り越えなければならない障壁がある」と指摘する。この研究は医学誌「Science Translational Medicine」に発表された。 生活習慣のうち特に重要なのは、食事、運動、肥満防止、禁煙などだ。米国のがん患者の3分の1に喫煙習慣が影響しており、20%に肥満が影響している。米国がん学会によると、がん診断を受ける患者数は毎年163万8,910人に上り、がんによる死亡数は心疾患に次ぐ57万7,190人に上る。米国のがんによる医療費を含む社会的損失は、年間2,260億ドル(約18兆7,000億円)に上るという。 Colditz氏は、広域のがん予防戦略の課題として3つを挙げている。すなわち、▽がんは予防可能であることを広く認知させること。禁煙の推進により米国の肺がんの75%を予防できる。▽がん研究の短期間化。がん予防の研究には5年以下の期間と費用が必要で、効果を確かめるまでに数十年がかかる。▽がん予防の介入の遅れ。例えば子宮頸がんの発症の多くにヒトパピローマウイルスの感染が関連しているとされており、予防接種によりがんを防げる可能性があるので早期介入が望ましい。 現状では、がん研究は予防ではなく治療に集中している。「がん治療では、診断後に単一器官のみに注目するが、がん発症の生物学的メカニズムを解明することが肝要だ。生活習慣の改善を広め、がんを予防し死亡率を低下させた方がはるかに効率が良い」とColditz氏は話す。 がん予防に向けた社会整備も重要だ。がんによる負担を縮小させる社会設計や、助成金への資金提供といった対策が必要となる。喫煙率の低下や、食事で摂取するトランス脂肪酸を減らすための対策は成果につながっている。国立がん研究所(NCI)は、喫煙率を低下させる政策が成人男女の肺がん予防に役立っていると発表した。 がん予防戦略が心疾患や他の慢性疾患の負担を減らすことも示された。「社会全体ががん予防に向けた対策の必要性を認識し、健康的な生活習慣を定着させるために真剣に努力しなければいけない」としている。 More Than Half of All Cancer is Preventable(サイトマンがんセンター 2012年3月28日)
[Terahata]