2012年02月23日
歩行速度や握力が低下した高齢者 認知症や脳卒中リスクが上昇
キーワード: 脳梗塞/脳出血 三多(多動・多休・多接) 認知症

高齢になり歩行速度や握力が低下すると、認知症や脳卒中リスクが上昇する――そんな研究結果が、米国神経学会の公式サイトに発表された。将来は医師が患者の歩行速度や握力を検査することで、認知症や脳卒中の危険度を早期発見できるようになるかもしれない。
身体能力の衰えが脳疾患を招いている可能性
「神経科医や総合医が診療室で行う基本的なテストにより、認知症と脳卒中の危険性を容易に病識できるようになる可能性がある」と米ボストン医療センターのErica C. Camargo氏は話す。
Camargo氏らは、平均年齢62歳の男女2,400人以上を対象に、歩く速度、握力、認知能力のテストを実施した。磁気共鳴断層撮影(MRI)による、脳の健康診断も行った。最長11年の調査期間中に、34人が認知症を、70人が脳卒中をそれぞれ発症した。
歩行速度が遅い人や握力の弱い人は将来的な認知症や脳卒中リスクが高まる傾向がみられた。歩行速度の遅い人では早い人に比べ、認知症の危険性が1.5倍に上昇しまた、握力の強い人は脳卒中や一過性脳乏血発作(TIA)リスクが42%低下するという結果になった。
65歳未満ではこうした傾向は認められなかったという。「高齢者の身体能力の衰えと、認知症や脳卒中の増加が関連あることを示したはじめての研究だ。今後の高齢者の指導に影響が出てくるだろう」とCamargo氏は話す。詳細は、4月にニューオーリンズで開催される第64回米国神経学会で発表される予定だ。
さらに、歩行速度の遅い人は脳の総容積がより小さく、記憶、言語、判断などの認知能力に関する検査での得点が低かった。また、握力の強い人は脳の総容積がより大きく、認知能力のテストでも高得点だった。
Camargo氏らは「何らかの症状発現前の疾患が歩行速度や握力の低下を招いている可能性も考えられる。さらなる研究が必要だ」と結んでいる。
How Fast You Walk and Your Grip in Middle Age May Predict Dementia, Stroke(米国神経学会 2012年2月15日)
[Terahata]