2012年01月18日
アルコールがもたらす障害は国によって違う 米韓で比較
キーワード: 二少(少食・少酒) 糖尿病 心筋梗塞/狭心症 脳梗塞/脳出血 がん 「少酒」お酒はほどほどに 飲酒

アルコール乱用・依存症や抑うつ症の関連性について、アジアと米国とで比較した研究が発表された。米国の方がアルコール摂取障害の比率が高く、治療を必要するケースも多いとみられている。
アルコール依存症 社会的背景の影響も大きい
世界保健機関(WHO)によると、危険なアルコール乱用・依存症や抑うつ症は、身体障害や早期死亡を引き起こす主な原因となる。アルコールの消費は低・中所得国でも増えており、たばこの蔓延に似た状況が世界的にみられるという。
アルコール依存症(AUD)とニコチン依存症(ND)に関して米国人と韓国人を対象に調査した研究で、米国人のAUDはより深刻で、治療を必要するする患者も多い可能性があるという結果が示された。この研究は国際的な医学誌「Alcoholism: Clinical & Experimental Research」2012年春季号に掲載される予定。
「経済成長や都市化の著しい中・低所得国で、多くの人がストレスを感じている。ストレスに対処するためにアルコールなどを求めていると考えられる。アジア諸国の多くで女性の飲酒は禁忌とする伝統的スタイルがあるが、生活スタイルの欧米化に伴いそうした抑制も失われつつある」と韓国カトリック大学のHae Kook Lee氏は話す。
Lee氏ら研究チームは、AUDやND、不安障害などを比較するために、米国と韓国の一般市民を対象に12ヵ月にわたり調査した。その結果、アルコール摂取障害は米国が9.7%だったのに対し、韓国が7.1%、ニコチン依存は米国が14.4%、韓国が6.6%、気分障害は米国が9.5%、韓国が6.6%、不安障害は米国が11.9%、韓国が5.2%となった。
「米国人のアルコール依存症の割合は、韓国の4倍に相当した。韓国における保険診療のメンタルヘルスや、アルコールに対する社会的な認知などを考慮しても、両国の差は大きかった」とLee氏は話す。
「アルコールがもたらす障害について、医学的・社会的な研究が多くある。アルコール乱用は、健康障害の最大のリスク要因のひとつで、がん、糖尿病、脳卒中、高血圧、心血管病、肥満などに影響を及ぼす。アルコール依存症や大量飲酒者に脳萎縮が高い割合でみられることや、大量に飲酒したりアルコールを乱用した経験のある人では認知症になる人が多いといった疫学調査結果も報告されている」と国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)のHoward B. Moss氏は説明する。
「米国はアルコール問題について、長い文化的な歴史をもっている。米国の植民地時代に欧州から来た入植者の多くが、アルコール摂取の習慣が根強い国から入植してきた。1919〜1933年の禁酒法時代を除いては、米国人は節酒を重んじる文化をもったことが少ない。一方、韓国でもアルコール摂取の歴史はあるが、植民地時代には制限されており、特に女性では儒家思想の影響で飲酒が制限されていた。1986年に政府の政策が変えられてからアルコール摂取は増えた」とMoss氏は説明する。
先進国を中心に、男性の飲酒量は頭打ちないし減少傾向にあるが、女性の飲酒量は依然として増加傾向にあるとみられている。特に、若年女性の飲酒量の増加が懸念されており、女性は男性に比べアルコールによる健康障害を引き起こしやすいことが知られている。
「アルコール依存をめぐる環境因子は複雑で、社会・文化的の影響も大きいとみられる。こうした比較文化的な疫学研究は価値がある。アルコール依存症の病因学に対する文化的・環境上の影響についても考慮するべきだろう。人間の行動は非常に複雑なので、生物学的な判断だけで全てを解決できない」とMoss氏は結んでいる。
Comparing alcohol use and other disorders between the United States and South Korea(2012年1月16日)
[Terahata]