2011年11月18日
アルコール乱用の問題 医療主導で対策 国際コンセンサス
キーワード: 高血圧 二少(少食・少酒) 脂質異常症(高脂血症) 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム 動脈硬化 脳梗塞/脳出血 脂肪肝/NAFLD/NASH アルコール性肝炎 がん 「少酒」お酒はほどほどに 認知症 健診・保健指導 抗加齢(アンチエイジング) 疲労(休養不足) 食生活 飲酒

2011年9月にニューヨークの国連本部で開催された非感染性疾患(NCD)に関する国連サミットで、アルコールについて検討する国際委員会は、アルコール乱用と医療上の問題を検討し、アルコール乱用に対策する施策を各国政府に求める声明を発表した。声明は医学誌「ランセット」に9月15日付けで発表された。
アルコール乱用は生活習慣病の危険因子
国際委員会は声明で「アルコールの乱用が、個々の患者および公衆衛生上の障害になりうることに、臨床医は注意を払う必要がある。医師が中心となり情報を発信すれば、社会的な影響は大きい。医師がアルコールに関するしっかりとしたエビデンスを構築し、政府の保健政策に働きかけ、強力なリーダーシップを示すことが求められている」と宣言した。

WHO報告書「アルコール乱用を縮小するための広域戦略」
世界保健機関(WHO)が2010年5月に発表した報告書「アルコール乱用を縮小するための広域戦略」によると、アルコールの飲みすぎは、冠動脈疾患、脳卒中、2型糖尿病など60を越える疾患の危険性を高める。
毎年、過度の飲酒やアルコール依存などが原因となり、世界で250万人が死亡しており、うち32万人は15〜29歳の若い世代だという。アルコールの悪用は、不健康な生活習慣の3つの主要な危険因子のひとつで、2004年の推計によると世界の全死亡の4%に関連している。
アルコールによる健康障害
循環器疾患
An international consensus for medical leadership on alcohol適量の飲酒は循環器疾患に保護的に働くという報告もあるが、適切な飲酒量は男性では2ドリンクまで、女性ではこれより少ない量でかなり限られれている。過度の飲酒は逆に循環器疾患の危険性を高める。肝臓病
アルコールの飲みすぎにより肝臓病の危険性が高まる。過度の飲酒により脂肪肝を発症しやすくなり、飲み続けているとアルコール性肝炎になり、死亡することもある。膵臓病
慢性膵炎の状態では、アルコール依存症になっている場合が多くみられる。メタボリックシンドローム
過度の飲酒は、メタボリックシンドロームに関わる高血圧、脂質異常症、高血糖の危険性を高める。アルコール性肝炎
大量の飲酒が習慣となっている人は、アルコール性肝炎を発症し、進行すると肝硬変や肝臓がんに進展するおそれがある。アルコール依存症が背景にある場合、専門の治療が必要となる。抑うつ症
アルコール依存症とうつ病の合併は頻度が高く、アルコール依存症に抑うつ症状がみられる場合や、抑うつ症が先行し後からアルコール依存症になる場合などのパターンがみられる。習慣的な大量飲酒やアルコール依存は自殺の危険性を高めるという報告がある。認知症
アルコール依存症や大量飲酒者に脳萎縮が高い割合でみられることや、大量飲酒やアルコール乱用の習慣のある人で認知症が増えるといった疫学調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが示されている。ただし、少量の飲酒は認知症の原因にはならず、予防になる可能性も示されている。がん
過度の飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳がんの原因となる。特にアルデヒド脱水素酵素の働きが弱く、少量の飲酒で赤くなる体質の人では、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道がんの原因となる。
The Lancet, Volume 378, Issue 9798, Page 1215, 1 October 2011
Global strategy to reduce harmful use of alcohol(世界保健機関 2010年5月21日)
[Terahata]