2010年12月27日
無煙たばこが世界的に人気 有煙たばこより「健康的」?
キーワード: 「無煙」喫煙は万病の元

たばこというと火を付けて燃やし煙を吸う紙巻たばこが一般的だが、最近では火をつけず煙を出さない嗅ぎたばこが「無煙たばこ」などと販売されるようになっている。無煙たばこは特に北欧で人気が高く、日本でも健康増進法の施行以降、決められた喫煙所以外での喫煙が禁止されていることなどが影響し、今後は人気が高まりそうだ。無煙たばこは有煙たばこに比べ「健康的」といえるのだろうか。
無煙たばこは安全な選択ではない
無煙たばこ(かぎたばこ)を習慣的に使用する人が多くの国で増加している。特に北欧では無煙たばこは人気があり、スウェーデンでは成人の2割、ノルウェーでは16〜35歳の3割が無煙たばこを喫煙しているという。スウェーデンでは有煙たばこの消費量が著しく減少するのであれば、むしろ無煙たばこの方が良いだろうと考えられている。
しかし、米国で行われた研究では、禁煙を試みる患者に行うニコチンガムやパッチを使用するニコチン補充療法の方が、無煙たばこよりも安全との結論が出ている。無煙であることが有害物質の発生を劇的に抑えるという根拠は示されておらず、嗅ぎたばこは心筋梗塞、脳卒中、口腔がんなどのリスクを上げることが知られている。無煙たばこも同様だという。また、受動喫煙についても、無煙たばこを吸った人の呼気に、ニコチンや有害物質が含まれていると報告された。
無煙たばこでも医療機関での禁煙治療は有効
無煙たばこの人気が世界的に高まっている背景として、禁煙補助薬の試験で有煙たばこに比べ無煙たばこでの有効性を報告した論文件数が少ないことも影響しているとみられる。
そこで、スウェーデンのFagerstrom Consulting AB 喫煙情報センターのKarl Fagerstrom氏らの研究チームは、無煙たばこをやめたい人を対象に禁煙補助薬「バレニクリン」(商品名:チャンピックス)の有効性と安全性について検討を行った。
対象となったのは無煙たばこを1日8回以上常用している18歳以上男女。試験はノルウェーおよびスウェーデンのそれぞれ7ヵ所と9ヵ所の医療機関で、二重盲検プラセボ対照の多施設試験として行われた。
被験者はバレニクリン1日2回1mg(最初の1週間は滴定)投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けられ、12週間の治療を行われ、その後14週間追跡調査された。一次エンドポイントは、治療最終4週間(9〜12週)の禁煙率で、コチニン濃度で確認した。二次エンドポイントは、9〜26週間の禁煙の持続率で判定した。安全性と忍容性の評価も行った。
その結果、治療最終4週間(9〜12週)の禁煙率は、バレニクリン群の方が有意に高かった。禁煙率はバレニクリン群で59%だったのに対し、プラセボ群で39%だった。このバレニクリン群の優位性は、治療後の追跡調査期間14週の間も持続し、9〜26週間の禁煙率はバレニクリン群で45%だったのに対し、プラセボ群で34%だった。
無煙たばこ製品は安全な選択肢ではない(米国心臓学会、2010年9月13日)
米国心臓学会は9月に、かぎたばこ(無煙たばこ)製品について、「長期の使用により、致死性の心筋梗塞や脳卒中、がんなどの発症が増えることが、研究で確かめられた」として、「かぎたばこは習慣性があり、安全ではない。禁煙を強く勧める」との声明を発表した。
Smokeless tobacco products not a safe option, won't help smokers quit
Stopping smokeless tobacco with varenicline: randomised double blind placebo controlled trial米国心臓学会は9月に、かぎたばこ(無煙たばこ)製品について、「長期の使用により、致死性の心筋梗塞や脳卒中、がんなどの発症が増えることが、研究で確かめられた」として、「かぎたばこは習慣性があり、安全ではない。禁煙を強く勧める」との声明を発表した。
Smokeless tobacco products not a safe option, won't help smokers quit
British Medical Journal, 2010; 341:c6549
[Terahata]