2010年11月04日
緑茶のがん予防効果:乳がんでは関連なし? 厚労省研究班
キーワード: がん 「無煙」喫煙は万病の元
緑茶はがんの予防効果があるとの研究報告があるが、たくさん飲んだ人と飲まない人で、乳がんについては発生率に差はないことが、5万人規模を平均13.6年追跡した5万人規模の大規模研究でわかった。
1日10杯以上飲んでいても「効果はない」?
この研究は、厚生労働省研究班(主任:津金昌一郎 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部長)による多目的コホート研究「JPHCスタディ」として行われた。
緑茶に豊富に含まれるポリフェノール類(主にカテキン類)には抗酸化作用があり、試験管データや動物実験から乳がんを予防する可能性が示されている。
研究チームは、アジア人で欧米人に比べ乳がんが少ないことに着目。緑茶を飲む習慣と乳がんとの関連を調べた。
1990年と93年に岩手や大阪など10府県に在住していた40〜69歳の女性約5万4000人を対象に、2006年まで追跡調査した。緑茶を飲む頻度を「週1杯未満」から「1日5杯以上」の6段階に分けて発症との関連を調べた。週1杯未満飲む人は12%、1日5杯以上飲む人は27%だった。
平均13.6年の追跡期間中に、581人が乳がんになったが、緑茶摂取と乳がんリスクとの間には関連はみられなかった。
5年後に再び調査に応じた約4万4000人について、煎茶や玄米茶など緑茶の種類も分けるなどして詳しく調べた。350人が乳がんになったが、やはり乳がんの危険性と飲んだ量との関連はみられなかった。
アンケートの回答をもとに、閉経前と閉経後に分けて解析したが、同様の結果になった。
研究を担当した岩崎基・国立がん研究センター予防研究部室長は、「日本人女性を対象に、緑茶摂取量が1週間当たり1杯未満から10杯以上まで幅広く調べた研究は初めて」と述べている。
カテキン類の摂取量は、茶葉の種類・量、入れ方などの影響を受ける。研究にはカテキン類の摂取量の違いまで反映できていない可能性がある。しかし、1日10杯以上と非常に多く飲む女性でも乳がんリスクの低下はみられず、日常生活において飲用する範囲では乳がんリスクに関連しないことが示された」としている。
ただし、がんの部位別にみると緑茶は“予防効果がある”との結果も出ている。
JPHCスタディでは過去に、緑茶の胃がん予防効果についても調べており、緑茶をよく飲む40歳以上の女性では血中の緑茶ポリフェノール濃度が高く、胃がんのリスクが低下することが示されたが、喫煙習慣があるとこの効果を得られないという結果になった。また、40歳以上の男性では緑茶をよく飲んでいると、進行前立腺がんのリスクが低下するという結果が出ている。
研究は医学誌「Breast Cancer Research」に10月28日付けで発表された。
Green tea drinking and subsequent risk of breast cancer in a population-based cohort of Japanese womenBreast Cancer Research 2010, 12:R88doi:10.1186/bcr2756
独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部
[Terahata]