2010年10月22日
特定健診:受診率が伸びず 後発薬使用率に格差 協会けんぽ
キーワード: 肥満症/メタボリックシンドローム 生活習慣病の医療費
中小企業の従業員や家族約3500万人が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は、2008年度医療費の分析結果をまとめた。「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)のリスク保有率の平均は11.9%だった。
協会けんぽは、旧政府管掌健康保険の運営が旧社会保険庁から分離されて208年10月に設立、運営や保険料は原則として都道府県単位に変わった。医療費を調査し分析するのは今回が初めて。 それによると、「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)のリスク保有率(メタボ基準該当率)の全国平均は11.9%だった。脂質異常のリスク保有率は同24.5%、代謝性疾患のリスク保有率は同14.4%、1人当たりの平均医療費は14万3526円となった。
特定健診の受診率は4割に届かず
医療費(保険給付費)が増加する一方で、不景気などの影響で保険料収入が落ち込み、協会けんぽの財政は悪化している。生活習慣病を予防し医療費を抑制するためにも、特定健診の受診率の向上が急務になっている。
特定健診では、生活習慣病の危険性が高まるメタボリックシンドロームに着目し、腹囲径を必須項目としている。腹囲や血圧、血糖値などからメタボの該当者や予備群と判定された場合、治療薬を服用している人などを除き食事や運動に関する指導(特定保健指導)を受ける。
40〜74歳を対象とした特定健康診査(特定健診=メタボ健診)の初年度の受診率は、協会けんぽでは38.3%で目標の62.5%を大きく下回った。特定健診と保健指導の受診率向上は大きな課題になっている。
そこで同協会では、特定健診の推進方策として、「胃内視鏡やHbA1cなど加入者等から要望の多い検査項目の追加」、「健診実施機関数を増やすため、健診機関選定基準を見直し」、「婦人健診や付加健診が実施できなくても一般健診が実施できれば契約できるように基準を緩和」等を検討している。
特定保健指導については、「保健師1人当たりの特定保健指導実施件数(評価終了件数)の増大」、「管理栄養士、協会による保健指導を補完するための外部委託の活用」、「健診実施機関への委託」等を促進したい考えだ。
ジェネリック医薬品(後発薬)の平均利用率は22.3%
協会けんぽの加入者が医療機関にかかった際に処方される薬のうち、ジェネリック医薬品(後発薬)を使う割合の全国平均は22.3%だった。
後発薬は先発薬の特許期間が切れた後に、別の製薬会社が同じ主成分を使って販売する安価な薬。2010年度の診療報酬改定では、「保険医は後発薬の使用を考慮するよう努めなくてはならない」等が規定された。
協会けんぽでは、医療費の適正化対策の一環として、加入者に対する「ジェネリック医薬品の使用促進」に取り組んでおり、「希望カードやお薬手帳に貼れる希望シールの配布」、「ジェネリック医薬品に切替えた場合の自己負担軽減額を通知するサービス」などを実施している。
軽減額の通知サービスは、2009年度は約145万通を通知したが、今年度は11月からの3ヵ月間だけですでに90万通を超えた。
同協会が、今年6月時点の後発薬の使用状況を調査したところ、使用割合(数量ベース)は年々上昇しており、全国平均は22.3%だった。2008年7月は16.6%だったので、2年で約6ポイント伸びた計算になる。1月〜6月までに限ってみると3.7ポイントと大幅に増えている。
ただし、後発薬の使用は都道府県によって差があり、最高の沖縄県(36.0%)と最低の徳島県(17.5%)で2倍強の開きがあることが分かった。
沖縄県は2位の鹿児島県(26.5%)と比べても突出して高かった。同協会では「不景気や所得の低迷などが影響し、加入している患者で医療費を抑えようという意識が強いのではないか」と分析している。
第22回全国健康保険協会運営委員会資料(協会けんぽ)
生活習慣病とその予防(協会けんぽ)監修:池田義雄 先生(日本生活習慣病予防協会 理事長)
[Terahata]