2010年06月09日
高齢者が肉類を適度にとると転倒骨折が減少 東北大調査
キーワード: 骨粗鬆症/ロコモティブシンドローム/サルコペニア

肉類を適度にとっている高齢者では、転倒で骨折する危険性が、肉類をとらない人の3分の1に減ることが、東北大学が行った調査研究で分かった。逆に、食事が極端に野菜中心であると、骨折リスクは高まるという。
東北大学の岩崎鋼准教授(先進漢方治療医学寄付講座)らは、仙台市鶴ヶ谷地区に住む70歳以上の男女1178名を対象に、2002年に食事を含む生活状況に関する対面調査を行い、2006年までの医療保険記録をもとに、転倒骨折の頻度を調べた。 食事内容を主成分分析という統計学の手法で解析し、それぞれの食事内容や習慣を推定し、転倒骨折との関連を調べた。食事のパターンを「野菜食」、「肉食」、「日本食」の3種類に分類し、対象者を「よくあてはまる」、「ややあてはまる」、「あてはまらない」に分けて解析した。 その結果、転倒骨折の危険性は、肉食をあまりとらなかった人では、ほどよくとった人に比べ2.8倍高かった。さらに、野菜を多くとった人では、そうでない人に比べ2.7倍高くなった。野菜ばかりを食べている人は肉類をとらない傾向もみられた。 さらに詳しくみたところ、野菜の中でも「淡黄色野菜」をよくとる人では骨折が減るのに対し、海草や根菜類に偏る人では増える傾向があるという。さらに、菓子類を食べすぎると骨折リスクを高めるという結果になった。 転倒による骨折は寝たきりの生活にも結びつく。研究チームでは「高齢者では、意外にも適度な肉類の摂取が骨折リスクを減らすことが分かった。肉類を適度にとり、野菜の過度な摂取に偏らないことが、転倒骨折の予防に有用と考えられる」と述べている。 欧米では、逆に果物や野菜をよくとる高齢者で骨密度が高いという研究報告が多い。この点については「日本人の高齢者の肉類摂取は欧米の4分の1と少ない。肉類には動物性蛋白質が多く含まれている。高齢になって極端に肉を食べないでいると足腰の筋肉が落ち、転倒しやすくなるのではないか。今回の結果は漢方の食養生に関する有名な事典『本草綱目』の記載とも一致する」と説明している。 この研究は、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野、同研究科運動学分野、加齢医学研究所老年医学分野などが、仙台市鶴ヶ谷地区で実施してきた生活調査「鶴が谷スタディ」の一環として行ったもので、オンラインジャーナル「BMC Geriatrics」に発表された。 適度な肉類摂取は高齢者の骨折を予防する(東北大学大学院医学系研究科)
[Terahata]