2010年04月16日
農水省が「医農連携」を研究・計画
農林水産省は、農林水産研究開発の10年後の重点目標を示した新たな「農林水産研究基本計画」をまとめ、4月8日に公表した。予防医学の推進や医農連携を重点の1つとして取り上げている。
計画では、経済と環境の両立を世界と日本の成長の原動力とする必要があるとの考え方を示し、食料問題の解決や低炭素社会への適応などを柱とした「グリーン・イノベーション」、予防医学に向けた食品開発や医療分野への展開などを柱とした「ライフ・イノベーション」、環境資源の活用などを柱とする「基盤的研究」を掲げた。 なかでも「医農連携による健康社会の実現」で計画しているのは、これまで利用されていなかった生物機能を医療分野で活用する技術の開発だ。すでにカイコに新たな遺伝子を導入し、蛋白質や高機能を与えた絹糸を生産させるなどの成果を得ている。今後は、こうした絹糸などを用いた人工血管、軟骨・角膜再生用素材および創傷被覆材の実用化など、医療分野などでの生物産業の創出に向けた技術を開発する。達成目標は10年間。 農林水産物・食品の開発では、農産物の機能性成分の開発や実証を通じて、高血圧、脂質代謝異常などの生活習慣病を予防する作用メカニズムの解明と技術を開発する。これも10年間の達成目標を掲げた。この分野の実績としてはメチル化カテキンの抗アレルギー作用を解明して、これを含む茶品種「べにふうき」を開発し、商品化している。
農林水産物・食品の機能性解明と情報の整備・活用 【主な達成目標】5年まで
- 生活習慣病のリスクを低減するため、大麦グルカン、サツマイモアントシアニン、みかんカロテノイド、茶カテキンなど、米、畑作物、野菜、果樹、工芸作物などについて、高血圧、脂質代謝異常症などを予防する機能性成分の同定と作用機序の解明、農林水産物・食品機能データベースのプロトタイプの構築
- 乳酸菌などの微生物や畜産物成分の機能性の解明。アレルギーや生活習慣病などの予防・リスク低減効果を有する畜産素材・食品の開発
10年まで
- 新たな機能性成分の同定と作用機序の解明。高血圧、脂質代謝異常の予防、アレルギー・炎症抑制などの目的別機能性成分やそれを含有する農林水産物・食品についてデータベースを開発
- 抗酸化指標としてのORACなど、同様の機能を有する成分・食品の機能性の比較評価を行うための指標の開発
- 生活習慣病予防効果などの機能性成分などに重点を置いた茶品種の育成
農林水産研究基本計画(農林水産省)